風邪薬は、どうして1箱しか売ってくれないの?
新型コロナは5類に移行されましが、流行が収まったわけでもなく、今はインフルエンザも数年ぶりに猛威を振るっています。その上“普通の風邪”も今年は流行っているようです。
ドラッグ店舗でも例年より子供用・大人用を問わず、風邪薬をお求めになるお客様が増えている実感があります。
ところで、常備用に風邪薬を2箱買おうとしても「風邪薬はお1人様1個まででお願いします」と言われた経験はありませんか。どこのドラッグストアでも風邪薬はお1人様1箱という制限をつけているところがほとんどになっています。なぜでしょうか?
「風邪薬」に入っている成分について
風邪薬を1人1個に制限している理由は、取り扱いを注意すべき成分があるためです。
風邪薬は11の症状(のどの痛み、発熱、鼻水、鼻づまり、せき、たん、
悪寒、頭痛、くしゃみ、関節の痛み、筋肉の痛み)に対応できるように有効成分が組み合わせされています。そのなかで、
・咳に効く成分
コデイン、ジヒドロコデイン
・鼻づまり、鼻水、くしゃみに効く成分
エフェドリン、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン
・鎮静成分(おもに頭痛薬に配合)
ブロモバレリル尿素
の5つの成分のいずれかが入っている風邪薬(頭痛薬なども含む)が販売規制の対象と
なっています。
これらは、依存性があり、厚生労働省より「濫用(乱用)等のおそれのある成分」として、市販薬販売において特段の注意喚起がなされています。
10代に急増するオーバードーズ問題
近頃、ネットや新聞、テレビなどでも盛んに報じられているのが「10代のオーバー
ドーズ」です。オーバードーズは「薬の過剰摂取」のことで、略して“OD”とも呼ばれ
ます。
ある統計では2014年時点で10代の薬物問題のほとんどが「危険ドラッグ(脱法ドラッグ)」によるものでした。一方で、市販薬に起因した問題は0%でした。
その後、法規制により「危険ドラッグ」の取締まりが強化され「危険ドラッグ」の問題が減少した一方で、市販薬の過剰摂取が急増してしまいました。2022年の統計では、10代の薬物問題の56%を市販薬が占め、大きな問題になりました。そのため市販薬を販売する薬局、ドラッグストアは、より厳格に対処するようになりました。
風邪薬は、どうして1箱しか売ってくれないの?
薬物問題の対処法として①社会的制約(法規制など)②教育(過剰服用や薬物依存の危険性を周知するなど)③販売体制の強化(厳格化)などによって防いでゆくことになります。
実際、例に挙げたような成分を含む風邪薬などを販売する時、場合によっては販売しないことも念頭にいれながら、販売数は最小限(1箱)、特に未成年へ販売する場合は、年齢確認のうえ、注意を促すなどの対応をしています。
出口(供給)を締めることは、重要な薬物対策です。購入するお客様の倫理観に頼るだけではなく、薬に関わるひとりひとりが、薬物問題に対して責任感を持って対応していくことが大切だと、私達ヤマザワ薬品は考えています。
医薬品は生活を支えるものであり、生活を壊すものであってはならない
医薬品を適正に使用することはQOL(生活資質)の向上につながります。しかし、薬の
過剰摂取や、薬に対する過剰な期待は、逆にQOLの低下につながり、生活そのものを
壊しかねません。
医薬品を適正に使用するために、不明な点は、ぜひ薬剤師・登録販売者に相談しましょう。そのために、医薬品の資格者が常に店舗にいるのですから。
生活のリズムを整えて、不調の時は休息や適切な医薬品の使用で厳しい冬を乗り切りま
しょう。
付録:今回の薬用植物
「レンギョウ」
レンギョウ(連翹、Forsythiae)は、モクセイ科レンギョウ属の落葉性低木広葉樹。
各地、特にアジアに多い木本。果実を用いる。利尿・排膿・清熱作用などがあり、皮膚の化膿性疾患などに用いる。
含まれる主な漢方薬
防風通聖散、荊芥連翹湯、清上防風湯など