2021.10.23

『感染性胃腸炎(お腹の風邪)』にご用心!

冬になると「風邪」「インフルエンザ」とともに流行するのが『感染性胃腸炎』です(いわゆる『お腹の風邪』です)。『感染性胃腸炎』は、下痢や腹痛といった困った症状を引き起こします。ノロウイルスやロタウイルスの感染によるものがよく知られています。

一般的に『感染性胃腸炎』のほかに、下痢を引き起す原因には「飲みすぎ、食べ過ぎ」「ストレス」「お腹の冷え」などが原因となる『非感染性の胃腸炎』があります。“感染性”“非感染性”を正しく見極めることが、下痢の対応では非常に大切になります。

『感染性胃腸炎』の見分け方

『感染性胃腸炎』による下痢には次のような特徴が見られます

①急激な腹痛

②水様便が続き、短時間の間に何度もトイレに行く

③発熱や嘔吐を伴う

④家族に同じような症状が現れる

下痢を伴い、②③④のいずれかに該当する場合は“感染性”を疑ってください。

“感染性の下痢”の対処法

基本は原因となる細菌やウイルスをできるだけ早く排出することです。

ひどい下痢症状や高熱・嘔吐がある場合や、下痢症状自体は軽くとも体力がないと判断される場合は、出来るだけ早く受診して下さい。市販薬では対応できません。

自宅で様子をみると判断した場合は、しっかり水分補給をしましょう。経口補水液をこまめに摂取してください。もし1週間以上長く続く場合は要注意です。特に高齢者や乳幼児の場合は、数日の下痢でも急変する事がありうるため注意深く状態を観察しましょう。

市販薬の下痢止めの使い方

比較的軽い下痢で、発熱や吐き気もなく、どうしても用事があって下痢止めを服用したい場合には、薬の使用は1~3回程度でとどめて、何度も繰り返し服用しないで下さい。特に乳幼児の場合は、下痢止めは服用せず、ビヒィズス菌などの乳酸菌を主成分とした整腸剤を使用して、様子をみる方がよいでしょう。

市販の下痢止め薬の多くはその「効能・効果」に「食あたり・水あたり」と書いてあります。「食あたり・水あたり」とは食中毒のことを指し、なんらかの有毒・有害物質が含まれる食品を飲食して胃腸炎などの急性障害をひきおこす疾患です。有毒・有害物質とは細菌やウイルスなどの微生物、寄生虫、キノコやフグなどの自然毒、化学物質など多岐にわたります。市販の下痢止めを使用すれば、食中毒における感染性の下痢でも一時的に止めることはできるかもしれません。しかし下痢を無理やり止めると、原因となっている細菌・ウイルスなどの増殖を招き、却って症状を悪化させることになります。特に成分欄に「ロペラミド塩酸塩」「ロートエキス」と記載された市販薬の安易な使用はおすすめできません(無理やり腸の動きを止めます)。

新型コロナ感染予防と同様で、細菌やウイルスの侵入を防ぐ生活習慣を身につけることや、出来るだけ加熱した食品を口にすることで『お腹の風邪』は予防することができます。

“非感染性の下痢”の対処方法

“非感染性の下痢”は、一般的には「ストレス」「冷え」「食べ過ぎ」「飲みすぎ」によるものが考えられます(薬の副作用や「過敏性大腸炎」などの疾患による下痢を除く)。この場合は、効能・効果を確認したうえで、市販の下痢止めの使用が可能です。ただし、長期間の服用は避けて下さい。長期間続く下痢の場合は、自分が考えているほかに、原因となる要因が隠されている場合もありますので、医師による診察をお勧めします。

いずれの下痢にしても、最も怖いのは「脱水症状」になることです。お腹を冷やさないようにして、排出した水分は「ぬるま湯」や「経口補水液(OS-1など)」で補給をしましょう。またゼリー飲料などを使用する場合は、食物繊維を含まないものを選んで下さい。購入の際に原材料表示のところで確認できます。「難消化性デキストリン」「水溶性デキストリン」と記載された成分も食物繊維のことです。また、甘いジュースや炭酸飲料も、症状が落ち着くまで避けた方がよいかと思います。

これからますます寒い季節になります。体を冷やさないようにして、免疫バランスを崩さないことも、体調を保つうえで重要なことです。コロナ禍のなか、体調管理に十分に気をつけてお過ごし下さい。

付録:今回の薬用植物

エキナセア(紫馬簾菊Echinacea purpurea、)は、キク科ムラサキバレンギク属の多年草。

北アメリカ原産。観賞用も数多くあるが、いくつかの品種の葉、茎、花、根に免疫力を高める効果があるとされ風邪や上気道感染症の改善目的で使用されることがあります。

古くからアメリカ先住民の伝統医学で使われていましたが、有用であることを示す科学的根拠(エビデンス)は十分ではないとされています。

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